Miwatis Praha

2023年2月25日

チェコの公式(司法)翻訳・通訳

チェコに滞在するビザを取得するための書類、チェコの人との婚姻・離婚の手続き、会社設立に必要な書類などは、すべて外国語からチェコ語に翻訳・通訳することが法律で決められています。こうした公式の翻訳・通訳は、公式翻訳士(司法翻訳士)、公式通訳士(司法通訳士)としてチェコの国から認定された翻訳者、通訳者が行います。

チェコ国内であっても、チェコの国から認定されていない翻訳者・通訳者がこれらの業務を行うことは、特別な場合を除いて認められておらず、また日本で作成された翻訳はチェコ国内及びチェコの在外公館(日本を除く)では受理されませんので、ご注意ください。

このブログでは、チェコの公式(司法)翻訳・通訳についてご紹介します。

<目次>

1. チェコの公式(司法)翻訳士・通訳士とは

1-1. チェコの公式(司法)翻訳・通訳をチェコ語では・・・

1-2. 司法翻訳士・通訳士の特徴・義務

2. チェコの公式(司法)翻訳士・通訳士に関する法律

2-1. 関連法律

2-2. 2020年1月1日からの変更点

3. チェコ公式(司法)翻訳士・通訳士になるには

3-1. チェコ公式(司法)翻訳士・通訳士になる条件

3-2. 法務省の試験

4. 経過措置

1. チェコの公式(司法)翻訳士・通訳士とは

1-1. チェコの公式(司法)翻訳・通訳をチェコ語では・・・

チェコの国の機関・自治体役所などが受け付ける文書を翻訳する業務、公証人が作成した文書を読み上げて通訳する業務などは、チェコ内務省に登録された翻訳士・通訳士が行います。

公式(司法)翻訳士・通訳士、公式翻訳はチェコ語で以下のとおりです。

公式(司法)翻訳士・通訳士:

soudní překladatel(司法翻訳士)

soudní tlumočník(司法通訳士)

翻訳された文書:

úřední překlad(公式翻訳)

soudní překlad、soudně ověřený překlad(司法翻訳)

1-2. 司法翻訳士・通訳士の特徴・義務

<法務省による任命・登録>

チェコの司法翻訳士・通訳士は、法律および省令で定められた規定に基づいて、チェコの国(法務省)から任命されます。各翻訳士・通訳士は、各自の能力に応じて、法律上定められた条件(3-1参照)を満たしている言語について翻訳士・通訳士として登録されます。

任命後、司法翻訳士・司法通訳士としての登録カードが発行され、翻訳士・通訳士としての公式印を作成する許可が下ります。公式印には、チェコの国の紋章、翻訳士・通訳士の名前、翻訳・通訳することを認められた言語が記載されます。法律では、公式翻訳・通訳するときに守るべき内容、司法翻訳士・通訳士としての義務、それに違反した場合に課される罰金などが細かく定められています。

チェコの司法翻訳士・通訳士には、法律上、以下の内容が課されています。

「司法翻訳士・通訳士は、国から翻訳・通訳することを認められた言語に限定して翻訳・通訳することが認められており、専門家に期待される注意を払い、独立した立場において、公平に、合意により設定した期間内または既に設定されている期間内に翻訳・通訳業務を行わなければならない」

(2019年法律集No. 354「司法通訳士及び司法翻訳士に関する法律」第4条第1項)

2. チェコの公式(司法)翻訳士・通訳士に関する法律

2-1. 関連法律

チェコの公式(司法)翻訳士・通訳士は、2019年12月31日まで、1967年法律集No. 36「鑑定人、通訳士に関する法律」(2005年及び2009年改定)に基づき、各地の裁判所から任命され、各裁判所に登録・管理されていました。

2020年1月1日から、新しい法律2019年法律集No. 354「司法通訳士及び司法翻訳士に関する法律」が施行され、チェコ共和国法務省が一括して全国の通訳士・翻訳士を登録・管理する制度が開始しました。

2-2. 2020年1月1日からの変更点

2019年末まで、司法通訳士と鑑定人に関する事項が同じ法律にて規定されていましたが、2020年からは司法翻訳士・通訳士のみを対象とする法律になりました。

また、2019年末までは「通訳士」として通訳及び翻訳の双方の業務を行うことが前提になっていましたが、新しい法律では、通訳のみ、または翻訳のみに限定して業務を行うことも認められたため、通訳士または翻訳士として、いずれか一方のみの登録も可能になりました。

その他、2020年1月1日からは、公式(司法)翻訳士、通訳士になるための条件が厳しくなりました。(3を参照)

3. チェコ公式(司法)翻訳士・通訳士になるには

3-1. チェコ公式(司法)翻訳士・通訳士になる条件

2020年1月1日から新しく施行された2019年法律集No. 354「司法通訳士及び司法翻訳士に関する法律」上、チェコの公式(司法)翻訳士・通訳士になるために、以下の条件が義務付けられました。

① 大学における翻訳・通訳学科修士課程または同様のカリキュラムの修士課程を修了していること。

② 法学修士課程を備えるチェコの大学にて、通訳者・翻訳者を対象とした1年間の法学過程(法律一般)を修了していること(試験合格にて修了)。

③ 法学修士課程を備えるチェコの大学にて、通訳者・翻訳者を対象とした1年間の法学過程(外国語)を修了していること(試験合格にて修了)。

(但し、現在開講されているのは英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語のみ)

④ 翻訳・通訳業務について5年以上の経験を有すること(5年間のうち、その大半は大学卒業後の期間であること)。

3-2. 法務省の試験

3-1の条件を満たしている場合、法務省が行っている司法翻訳士・通訳士試験を受ける資格が与えられます。この試験に合格すると、司法翻訳士・通訳士として任命され、法務省の司法翻訳士・通訳士リストに記載されます。

4. 経過措置

2020年1月1日から新しい法律による制度が開始しましたが、2025年12月31日まで5年間の移行期間が設けられています。この期間の経過措置は以下のとおりです。

・2020年1月1日当該法律施行時において、すでに過去直近10年間にわたり(司法)通訳士として業務を行っていた者は、3-1の条件を満たしているとみなす。

・2020年1月1日当該法律施行時において過去直近10年間、(司法)通訳士に任命されていなかった者(つまり、2010年1月1日以降に任命された人)は、2025年末までに3-1の条件を満たさなければならない。

・新しい法律が施行されたための経過措置として、2019年末までに司法翻訳士・通訳士として任命されていれば、2020年1月1日から2025年12月31日までの期間は、3-1の条件を満たさず、法務省の試験に合格していなくても業務を行うことを認める。

・2020年1月1日当該法律施行時において過去直近10年間にわたり翻訳士・通訳士として任命されて業務を行っていたかどうかにかかわらず、2026年1月1日以降も司法通 訳・翻訳士であり続けるためには、2025年末までに法務省が行う司法翻訳士・通訳士試験を受けて合格しなければならない。

次回は、公式(司法)翻訳の作成の仕方についてご説明します。

●公式(司法)翻訳・通訳についてはこちらのページ(翻訳通訳)もご覧ください。

●公式(司法)翻訳・通訳に関するお問い合わせはこちらへ

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